【四字熟語の処世術】萬事如意

 Date:2013年01月01日10時06分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任
萬事如意 


新年あけましておめでとうございます。
今年は、読者の皆様にとりまして、萬の事事が全て意の如くなりますように祈念いたします。

とはいえ、そう易易と自分の意のままに事が進まないというのが実社会です。しかし、進まないからこそ成長があると言えなくもありません。人は困難にぶつかるからこそ、それを乗り越えようと努力するものです。もし、萬事がうまくいくようであれば、人は努力を怠り、ステップアップは望めなくなるでしょう。

前に進もうとして一歩を踏み出しても現状維持がやっとの人生です。前進するには自分に打ち克って、さらに一歩前にとの心が不可欠です。

「人生とは逆流に舟を漕ぐが如し」とも言われます。流れに逆らって舟を進めるが如き人生においては、櫓を漕がなければすぐに下流へと流されてしまいます。流されないためには漕ぎ続けるしかありません。そして漕ぎ続けても現状維持がやっとなのです。
上流に上るためにはさらに強く漕ぎ続けなければなりません。漕ぎ続けるために必要なのはくじけそうになる心に鞭打つ強い心です。克己の心です。

禅語に「百尺(ひゃくしゃく)の竿頭(かんとう)、更に一歩を進む」という言葉があります。百尺竿頭とは禅の修行者が求め歩んできたところの到達点ともいえる極地のこと。そこに至ったとしても更に一歩を進めよとの教えです。満ちれば欠けるお月様の教えを思えば、まさに極点に達した時に成長は止まり、残りの人生は下降線を描いてしまうのです。目標に至ったとしてもさらに一歩、さらに一歩と弛まず努力する姿勢の貴さを教えてくれる言葉です。

また、中国には「百里を行く者は九十を半(なか)ばとす」との故事もあります。目標にあと少しという時こそ、人は油断という大敵に出会うもの。だからこそ、あと一歩という時には、まだまだ道は遠いと思って、気を緩めることなく歩み続けることの大切さを教えている言葉です。

こうした処世訓が私たちに教えるところからすれば、「萬事如意」であってほしいとは思うものの、こんなに危険なこともないように思います。

意の如くならないことは当たり前の事と諦め、悔やむことなく、成長への一歩と捉える姿勢を、今年は胸に刻んで、萬事に臨みたいと心を新たにする次第です。