【街景寸考】現役世代のためにできること

 Date:2019年02月27日08時01分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 今、日本は超がつく高齢社会だ。丁度わたしがリタイアした頃に超高齢社会へと突入したらしい。が、当時職場の行き帰りに見ていた都市部の風景からは、そうした実感を持つことはなかった。ところが、リタイアして生活の場が自宅中心になってからは、超高齢社会の真っ只中にいるという現実を思い知った。昼間の住宅街を散歩しているときや、平日の大型商業施設に行ったときなどには、わたしと同じような高齢者ばかりが棲息しているように見えることがある。それも、その数は日ごとに増えているように思える。

 日課にしている運動公園でのジョギングやウォーキングのときも、声をかけ合う同世代の仲間が増えてきた。そうした仲間たちに「ヨーッ」とか「お疲れー」とかの声かけを積極的にしているが、陽が落ちて辺りが薄暗くなるとトーンダウンしてしまう。爺さん・婆さんの手の振り方や足の運び、腰の曲がり具合が黒い影となり、それがまるでゾンビの行進のように見えてくるからだ。

 日本の高齢者はまだこの先20年は増え続けるという。その時点で65歳以上が占める割合は総人口の3割強にもなる。今でも高齢者に給付する年金、医療、介護に係る社会保障費は、国家財政に重くのしかかり、1000兆円超の政府の借金が増え続ける大きな要因になっている。素人ながら、先で国家破綻に陥るのではないかと心配してしまう。

 高齢世代を現役世代が支える負担率も大きくなっている。わたしが生まれた頃は、12人の現役世代で1人の高齢者を支えていたが、現在は少子化の影響もあって2.2人で1人を支える厳しい時代になった。あと50年ほど経つと、1人の現役が1人の高齢者を支えるという現役世代には超過酷な時代がくるというから恐ろしい。

 以前、ラジオで高齢社会を演目にしたケーシ高峰の漫談を聴いたことがある。彼は高齢世代が社会に色々負担をかけているということを面白おかしく語りながら、「ですから、高齢者のみなさんが日本のためにしてやれることは?」と、おどけた調子で客席に質問を投げかけて間(ま)を取った。立ちどころに客席は爆笑の渦となった。答えは明らかに「年寄りは早く天国に行ってやること」だったからだ。言葉ではなく間で笑いを取ったのだ。

 この漫談は面白かったが、聴きながら孤独死や介護離職、老々介護等の高齢社会が抱える実態も頭に浮かび、心底笑うことはできなかった。高齢問題は社会問題であり、政治の問題であり、喫緊の課題である。高齢者は高齢者個々にできることがある。生きている間は元気でいることだ。そうすれば、年金は別としても医療費や介護費は確実に減らすことができ、何よりも家族に迷惑をかけずに済む。

 運動公園で身体を動かすジジ・ババ連中も、思いはわたしと同じであるはずだ。3年前に逝った母は「元気に死ぬ」を見事に実践した。わたしの目指すべき大きな目標である。